今月はTitle表紙等で活躍中のイラストレーター福田透にクローズアップ。
京都のご自宅兼アトリエへと伺い、はんなりとした町並みを歩きながらの
ロングインタビュー。6/11に発売される電子音楽家・安田寿之(FPMの
元メンバーでテイトウワとも活動)のアートワークを担当した経緯にも迫りました。
interview&photo:hiroaki shono(visiontrack) text:yuko takeuchi(visiontrack)
庄野 : イラストレーターになったきっかけは何ですか?
福田 : 漠然とですけど、幼少の頃から絵でなにかをしたいという思いはあったんです。イラストレーターという職業は全く意識しませんでした。絵でなにかできればという単純な理由だけで、デザイン事務所やステーショナリーメーカーに入って。5、6年はそんな感じでしたね。
庄野 : そちらの会社では、イラストを描かれていたんですか?
福田 : ステーショナリーメーカーでは、商品企画に携わっていたので、デザインも絵も全てやっていましたよ。ステーショナリーやファンシー文具というのは筆記用具とは別に、コミュニケーションツールでもあるんですが、ある時期絵柄の入ったものが急激に売れなくなってきたんです。今思うと、コミュニケーションツールが変わり始める時期だったんですね。おのずと絵を描く必要が無くなってきて、色とかロゴだけとか。これは面白くないな、と思ったんです。
庄野 : 絵を描く機会がなくなったというわけですね。
福田 : そういうことですね。それで会社を辞めて、たまたま近しい人が独立してイラストレーターをやっているのを見て、こんな形で絵を描いて仕事として成立するんだなぁと思って、それでは僕も・・という感じですね。
庄野 : 初期の頃のイラストと今とでは、やはり随分タッチが変わっていますよね?
福田 : 最初は手描きだったんです。でもパソコンが実務に耐えられるようになってからは、画材を扱うのが大変だったというのもあって、手描きはやらなくなりました。新しいもの好きっていうのもあるんですけどね。Macを使うようになってからも、タッチが変わるタイミングそれぞれにきっかけがあって。例えば、Webサイト上でアニメーションを使うという仕事を手がけたときは、その当時、今のようにブロードバンドみたいな環境もなかったから、絵を工夫する必要があったです。できるだけ軽くして、効率よく絵を使い回したりとか。必然的に絵が変わりましたね。アニメーションも含めて、企業のオフィシャルキャラクターを作るようになってからは、よりデフォルメ感が強まっていきました。
庄野 : なるほど。キャラクタープロダクションのJ/e/tのメンバーとしても活動を始めたのは、その時期ですか?
福田 : そうですね。その頃に、J/e/tのときの太い罫線のキャラクターっていうのが出来上がってくるんですよ。その間にもカートゥーンとか、海外のアニメーションの影響とか色々あるんですけどね。
庄野 : 太い罫線のタッチになって、それが進化しつつも2、3年は同じタッチで描かれていたと思いますが、最近になって一段とタッチが変わりましたよね?
福田 : 単純に飽きてきたっていうのもあるんですけどね(笑)。僕はスケッチブックに落書きをたくさんするんですけど、それを本番で描いたものと見比べてみて、どっちが好きなのかって問いただしてみると、落書きのほうが好きだな、というときが多くなってきたんですよ。軽さとか、気負い無く抜けてる感じが。それを本番に持ち込みたいなと思い始めたんです。
庄野 : ある意味、原点回帰ですね。
福田 : 仕事でキャラクターなどをたくさん描いていると、整合性のあるものが求められる場合が多いので、頭が少し硬くなっていたと思うんですよ。それで、今のタッチになるまでに、いろいろ模索はしていたんです。例えば、ちょっとナンチャッテな気分でラフな絵を描いてみたりだとか。その時の絵ってめちゃくちゃ下手クソなんですよ。けども、ちょっと「でかした!」と思ってしまう自分がいたりして(笑)。そこを自然に壊れるまで時間をかけて描いてみて、スタイルを作ったって感じですね。それで、最近はようやく壊れてきた。しめしめと(笑)。そういうことを自分のWebサイトですっと続けてきているんです。今、150点ぐらい絵をアップしているんですけど、最初の50点あたりはまだ硬さ残ってますよ。
庄野 : 最近は以前にもまして、描くことが、ますます楽しそうですよね?
福田 : 楽しいですね。知人のイラストレーターの方にも、今のほうが好きに描いているのがわかると言われました。いやあ、ご機嫌ですよ。
庄野 : そういう今の福田さんの気分は、最近オープンされた
Webサイトにも反映されているようですね。ほぼ毎日オリジナル作品を1点は描いてらっしゃいますが、そのモチベーションはどこからくるのですか?
福田 : 一つには、ブログのシステムを使っているゆえに、見ている人からのダイレクトなレスポンスがあるっていうのが大きいですね。それと、今で160点近く描いているんですけど、200点を超えてくると、自ずと作品集を作ってみるとか可能性が広がってくるんです。そこも続けられる理由の一つですね。そのあたりは、しっかり考えていますよ。遊びのようで遊びではないですね。まじめにやっています。
庄野 : 今の新しいサイトを始めるにあたって、こだわったところはありますか?
福田 : 多くのイラストレーターのサイトっていうのは、TOPページから絵に辿りつくまでの距離が長い場合が多いように思うんですよ。僕はいきなりTOPから見てもらいたくて、バンっとイラストを表示したんです。最も新しいのはこれだ、という意味もこめて。ブログのシステムを使ったのは、更新が楽だからなんです。だけど、一見ブログだとわからないとよく言われるんですけどね。カレンダーとか自分が使わない機能は全部排除しましたから。今回ブログを始めるに当たって、海外のサービスも含めて、5つくらいのブログサービスを試してみました。どういうのが自分向きかなと思って。僕はそういうのしつこいんですよ(笑)気になると、とことん調べてしまいますね。
庄野 : 福田さんのイメージソースの豊富さ、深さ、ミクスチャーのうまさ、っていうのはどこから取り入れているものなんですか?
福田 : いろんなものをよく見ますね。それで、好きなものは色彩まで、ずっと頭に残ります。よほど気になるものは落書きして残したり。他にも驚くほど参考になるのが、子どもの絵です。子どもの絵というのは、とにかくめちゃくちゃなんですよ。紙を回しながら絵を描くことができないから、人物とか必ず歪んでいるんです。それが面白いなあ、と。僕の絵もどっちかの方向に歪んでいるんですけど、そういうのを敢えてやってみたりとかね。それから、子どもの描く手は、グーが描けないから、必ずパーなんですよ。腕は木の幹みたいに、体のわき腹から生えるんです。肩の骨があって、その末端から腕が出ているっていうのを、描けないんですね。他にも、絵心がない人の絵を研究したりもしますよ。絵心がない人のスケッチって、めちゃくちゃ面白いんですよ。脳でデフォルメして、手で伝えることが不得意であるのが、“絵心がない”ということだと思うんですけど、一気に形を描くのではなくて、確認しながらちょっとずつ描くんですね。一本の線を描くのでも、刺繍のようにジリジリと。そのジリジリした感じを取り入れたりしていますよ。
庄野 : 音楽といえば、電子音楽家の
安田寿之さんが6月11日に出されるニューアルバム“
WITH ROBO*BRAZILEIRA”のアートワークとして、福田さんがキャラクターを描かれたそうですけど、きっかけは何だったんですか?
福田 : 今年の一月、知人の安田くんがアップル銀座でやるライブの日に、ちょうど僕も東京へ行く機会と重なったんです。すでに彼からは「ROBO*BRAZILEIRA」というファーストアルバムをもらっていたので、ライブの前に聴き直してみたんですね。改めてすごくいいアルバムだなぁと思って。勢いで、僕の思うところのROBO*BRAZILEIRAというキャラクターを作ったんです。それを見た安田くんが気に入ってくれて。それで、ライブのステージの後ろで流すアートワークを手がけて、CDのブックレットも、ということになったんです。
庄野 : なるほど。いい出会いですね。
安田くんとは歩幅が合う感じなんです。クリエイティブに対する考え方が非常に似ているようですね。今回のアルバムやイベントに関わる以前に彼と話したときに、「クリエイティブに関わることを仕事としながら、仕事以外でも物作りをしたい」ってことで意気投合したんです。仕事ではあまり気乗りしないことでもやって、そのはけ口として好きなことやる、という意味ではなくて、好きなことを仕事にしているからには、好きなことでも報酬を得たいという純粋な思いなんですよ。
庄野 : 息が合っている感じは作品にも表れてますね。
福田 : ROBO*BRAZILEIRAのシリーズで曲ができれば、僕はいくらでも絵を描ける雰囲気になっています。安田くんもまた僕の絵を見て、影響されて曲を作りたいって思うこともあるそうです。とてもいい感じですよ。
庄野 : 今までで、面白かった仕事、印象に残っている仕事は何ですか?
福田 : NTTドコモ九州のキャンペーンサイトの仕事ですね。キャラクター制作からFlashアニメーションまで関わらせてもらいましたが、プロダクションの方も、一緒になって楽しんで、とことんこだわってやったっていう気がするんですよ。クライアントさんも一緒になって楽しんでくれているのがうれしかったですね。あの仕事は僕にとって自信のひとつにもなりましたし、大きく開けた感じがしましたね。
庄野 : 印刷物の仕事では何かありますか?
福田 : 最近では、TITLEの表紙の仕事が面白かったですね。グッドデザインの特集だったんです。最初にピンクのGマークのロゴが送られてきて、「自由に描いて下さい。」と言われたときにはビックリしましたけどね。“グッドデザイン”というからには、その道の権威あることでしょう。そのGマークに絵なんかのっけてもいいのか、と思って(笑)。でも、そのGマークを受け取ったときすでに、絵の雰囲気だとか、色はモノクロで行こうとか、思い付いていたんですけどね。この仕事は本当に楽しかったです。
庄野 : アニメーションも作られていますが、そのきっかけは何ですか?
福田 : 単純に動かしてみたらどうなるかという興味ですね。イラストレーターにとって、自分の絵を動かしてみたいという気持ちは誰しもあると思うんですよ。
庄野 : 興味だけでは普通あり得ない程、上手いと思うのですが、どんなふうにしてその技術を得ていったのですか?
福田 : 子供の頃から、アニメをよく見ていましたからね。絵と絵の間にどんな絵が何枚あるのか知りたい、と思って見てましたね。だから、今でもTVアニメでこの映像は1秒間に何コマある、っていうのが分かります(笑)。海外のカートゥーンとか、おもしろいコマが散りばめられていて、その一瞬見える一枚が子供の頃から気になっていましたね。へんな子供だったんでしょうね。
庄野 : アニメーションがうまくなるには、コマで見ることが重要なのですか?
福田 : イラストレーターというのは職業柄、決めポーズを描くことが多いですよね。一方、アニメーションというのは動くことを目的としているから、動作の流れを理解しないといけない。すると決めポーズから決めポーズへと移るような動作はアニメーションとしては、とても不自然なんですよ。宮崎駿さんとか、大塚康生さんのアニメって、決めポーズなんて無いですから。本当に重要なのは、抽象的だけど、動かすために絵を崩すというところだと思っています。このあたりは日本のアニメーション技術がもっとも優れていて、PIXARですら3DのCGにもかかわらず、絵の崩しかたが日本のアニメーションそっくりなんです。
庄野 : 今後やりたい仕事は何かありますか?
福田 : やっぱりアニメーションはやりたいですね。今のタッチで、どんな風に動くのか見たいんです。映画のオープニングがとにかく作りたい。例えばピンクパンサーのような、ヘンリー・マンシーニの音楽をバックに、ちょっとモダンな感じでっていうのがやりたいですね。それから、昔の日本のテレビドラマで、オープニングに切り絵みたいなアニメーションが使われていたんですよ。ソール・バスとかポール・ランドのようなとてもモダンな映像で。そういうのをぜひとも手がけてみたい。バラエティ以外でも、テレビはもっとイラストを使ってほしいですね。カレーマルシェのTVCMや王様のブランチのタイトルロゴなどをやらせて頂きましたが、今、最も興味あるのはTVと映画ですね。